QBSH2021立ち読み
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■諸外国の主な研究者とその理論チャドウィック, E.ラウントリー,B. S.個人の自由な利益追求が「神の見えざる手」を通じて国に富をもたらすものであり,救貧は自由競争の妨げになると説いた.諸個人の快楽は量的に計算でき(快楽計算),諸個人の快楽から苦痛を引いた後に残る快楽の総計が,社会全体の幸福であるとし,「最大多数の最大幸福」を説いた.救貧法改正に向けて,「全国的統一の原則」,「劣等処遇の原則」,「ワークハウス・システム」を提示し,新救貧法の成立につながった.ナショナル・ミニマムの政策を初めて提唱した.➡ナショナル・ミニマムとは,国が全ての国民に最低限度の生活を保障すること.ナショナル・ミニマムの政策として,最低賃金,生存と余暇,住宅,公衆衛生,教育水準,環境問題を提案した.イギリスのヨーク市で,労働者全員に対して生活調査を行い,結婚,子の出生など家族の生活周期と貧困との関係を調査した.世帯に必要な栄養量と食費から最低生活費を科学的に計測し,「貧困線」を算定した.・社会保障を「社会保険」を中心として,「国民扶助」,「任意保険」を組み合わせて計画的に行うことを主張した.・国家の責任はナショナル・ミニマムの保障であり,それを超える保障については,任意保険等の自発的努力を奨励すべきであるとした.・社会保障とは5つの巨悪,すなわち窮乏,疾病,無知,不潔(陋ろう隘あい),怠惰(無為)への対応としての所得保障,保健,教育,住宅および雇用制度の総称である.複合社会を主張し,「❶互酬」,「❷再分配」,「❸交換」の3つから構成されるとした.❶互酬:社会において,相互に品物や金銭などが市場を介さずに行き来する(相互扶助関係にある)こと.❷再分配:ものが社会の権力の中心に集まり,それから再び成員にもたらされること.❸交換:個人の間での財の相互的移動.市民資格(シティズンシップ)を「市民的権利」,「政治的権利」,「社会的権利」に分類し,20世紀に市民資格の地位に「社会的権利」を組み入れたことは,社会的不平等の全パターンを修正する試みであったと述べた.88(Chadwick, E.)(Rowntree, B.S.)(Beveridge, W.)(Polanyi, K.)(Marshall, T. H.)『道徳情操(感情)論』(1759年)『諸国民の富』(国富論)(1776年)スミス, A.(Smith, A.)ベンサム,J.(Bentham, J.)功利主義(19世紀)『救貧法の行政および実践活動に関する調査委員会報告書』(1834年)『産業民主制論』(1897年)ウェッブ夫妻(Webb, S. & B.)『大英社会主義社会の構成』(1920年)ヨーク調査(1899年)ベヴァリッジ, W.『社会保険および関連サービス』(1942年)(ベヴァリッジ報告)ポランニー, K.『大転換』(1944年)マーシャル, T. H.『市民資格と社会的階級』(1950年)基本事項基本事項

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