障害者施設で働く Hさん
生活支援員ってどんな仕事?


大学の時は特別支援学校の先生になることを志していましたが、高等部卒業後の進路に悩む人たちとの出会いによって、福祉の世界に興味を持ちました。
正直なところ「3年くらい福祉の世界を見てみようかな…」という軽い気持ちで就職し、気が付けば10年の月日が経っていました。

 

■生活支援員(障害者施設)の主な仕事内容

読んで字の如く「生活支援員」とは施設を利用される方々の「生活」を支援する仕事です。
教科書では「施設などで日常生活上の支援や身体機能・生活能力の向上に向けた支援や創作・生産活動をサポートする仕事」と説明されます。
生活支援員の仕事を大きく2つに分けると以下のようになります。

それぞれの主な内容と大切なポイントを紹介します。

 

①直接支援

日々の業務の9割は直接支援。とにもかくにも利用者さんと共に過ごします。

【感情は伝播する】
「関係性の構築」を実現するのは、かなりの労力と時間が必要です。声を掛けること1つでも、声の大きさ、トーン、単語数、タイミングなどで伝わり方は変わります。
そして何より、感情は伝播します
「何で伝わらないの?」という憤り、「どうせ伝わらないから…」といった諦めは必ず相手に伝わります。
一方、「あなたのことが知りたい」「伝えたい」という気持ちも伝わります。
そして、相手の動きを「待つこと」の大切さを繰り返し感じることで、関わり自体が楽しくなりました

 

【相手のことを「知る」】
生育歴や、過去の支援日誌・個人記録、各ご家族とのやりとりが残る連絡ノートなどの書類は、悩んだときの大きな助け舟でした
人にはそれぞれの「歴史」があります。施設入所後の記録も、時代によって取り組んでいたことから「もしかしてこんなこともできるのでは?」といった気付きに繋がります。
相手を「知る」ことは、人と関わる福祉の仕事の根幹だと感じています
現在でも、利用者さんへの働きかけや、利用者さんの様子は個人記録として残しています。
自分の残した記録が未来の支援員さんの役に立つ日がくると良いなと思っています。

 

【仮説思考】
利用者さんとの関わりの中で、一番大切にしていることは「仮説をいっぱい立てること」です
例えば、朝から落ち着かずに声を出し続けている利用者さんに対して、夜眠れなかったのか?/お腹が空いているのか?/暑い(寒い)のか?/うるさいのか?/眩しいのか?などを思い浮かべながら、1つ1つ整理していきます。
相手のことを決めつけず、何に快・不快を感じるのかを考えることは重要です。
といっても、色々考えた上で、「今日は落ち着かない日」という結論になることはよくあります

でも、「あなたのことが知りたい」という気持ちで向き合った思いは伝わっています

 

②間接支援

利用者さん以外の人々との関わりも、さまざまな情報を得る貴重な機会です

【研修】
福祉従事者として、都道府県が主催する初任者/中堅者向けの研修や、所属する法人の研修等、研修に参加させていただく機会も多いです。
初任者研修では県内の多種多様な事業所で働く仲間との出会いもあり、視野が広がります。
法人内研修では、「虐待防止」や「災害対策」「余暇支援」等々、テーマに沿った話し合いからの学びに加え、普段一緒に働いている仲間と、真剣に支援について話す時間にもなり、刺激を受けます。
その他にも、強度行動障害支援者養成の研修や、サービス管理責任者等の研修、コンサルタント研修等々にも参加しました。講義だけでなく、グループワークの多い研修が主でした。
研修に参加すると、更に日々の支援に向けた活力が湧きます

 

【保護者・後見人・通院・行政etc】
利用者さんを支えているのは施設だけではありません。保護者の方、ご兄弟、後見人、通院先の医師や看護師、市役所等の行政職員等、たくさんの方々と関わります
個別支援計画の説明や、モニタリング時にはご家族も同席していただきます。保護者の方も年々ご高齢になられ、ご自宅に伺っての説明や、利用サービスの拡大(送迎サービスの利用開始)なども検討します。
後見人の方とは、支援内容だけでなく、利用料請求に関わる連絡、行政職員の方とは、区分調査等を通して関わることもあります。

 

■やりがい

ソーシャルワーカーって結局のところ何なのだろう?と疑問に思ったことがあります。
資格がなくても出来る仕事、確かにそうです。
そんな疑問の中で「ソーシャルワーカーは相手に『あなたは幸せになって良いのだ』と伝えることが出来る仕事」という言葉に出会いました。
もちろん、それも資格がなくてもできること。
ただ、「あなたは幸せになって良いのだ」という言葉の背景には、障害者に対する根強い差別や偏見に向き合う覚悟があるように感じています。
「あなたは幸せになって良いのだ」と伝えられる人になることを目指し、障害が正しく理解され、誰もが生きやすい世の中の一端を担うことを目標に、福祉の仕事を続けています

 

■ソーシャルワーカーを目指す方へ

障害者支援施設に少しでも興味がある方は、難しく考えすぎず、施設見学からでもスタートして欲しいと思います。そこで生活される利用者の方々や支援員の姿を、直接見て欲しいです。
「生活」を支援するとは、利用される方々の人生に触れ、共に過ごすこと。
相手のことを理解しようと努めるうちに、自ずと自分自身と向き合うことになる仕事です

たくさんの人に出会い、たくさんの価値観を知ります。
相手との関わりの中で、自分自身の成長に気がつきます。
ぜひ、一緒に障害者福祉の世界で働いてみませんか?