福ぞうくんがいく!社会福祉士の活躍
#03 横浜石心会病院

こんにちは、福ぞうです。
医療、地域、行政、高齢者、障がい、児童、司法…などなど、様々な分野で活躍する社会福祉士たち。
社会福祉士は、利用者さんそれぞれの背景や課題があるなかで、一人ひとりの「その人らしく生きる(wellbeing)」道を一緒に探していきます。
活躍の場がどんどん広がっている社会福祉士に、福ぞうがお話を聞きました。

  • 育児と両立しながら活躍する社会福祉士
  1. MSWは自分にとって最適な選択
  2. ライフステージに合わせた働き方が叶う職業
  3. 子育てとの両立を通して仕事の意義を見直せた
  • どんなお仕事?
  1. MSWの役割
  2. 「連携」の重要性
  3. 自己研鑽で専門性を高める
  • 福祉に関心のあるあなたへ
  1. 信頼関係を築くには
  2. 俯瞰して自分の役割を考える
  3. 社会福祉士の魅力とは

育児と両立しながら活躍する社会福祉士


横浜石心会病院
天野 亜季さん

横浜石心会病院 患者支援室副主任。社会福祉士。
2013年に立教大学を卒業。新卒で川崎幸病院に就職し医療ソーシャルワーカー(MSW)として6年従事したのち、2019年に系列事業所のさいわい鶴見病院(現:横浜石心会病院)へ異動。2022年に第一子を出産。復職後、2023年より副主任となり現職。入院、外来患者への相談援助を行う。


1)MSWは自分にとって最適な選択

高校生のときに自己免疫疾患で2ヶ月入院したのが、MSWを目指すきっかけだったと話す天野さん。大学紹介のパンフレットに掲載されていたMSWの卒業生のインタビューを見て、「これだ」と思ったと当時を振り返ります。

当時はソーシャルワーカーという職業を知りませんでした。長い入院期間や、勉強に遅れが出ている状況に対し、不安でいっぱいで。そういうときに相談できる人がいたらよかったなと思っていたんです。そんな経験もあって、進路選択の際は自然と医療職を探していたのですが、介護職や看護職は持病のある自分が続けられるかという不安がありました。
そんなときソーシャルワーカーという職種を知って、「これだ」と思ったんです。体力的にも無理せず働くことができ、不安な思いを抱えている患者さんの近くで寄り添えるMSWは、私にとってぴったりな仕事でした。
keyword
医療ソーシャルワーカー(MSW)(RB2026 p.773)
Medical Social Workerの略。病院をはじめとして診療所、介護老人保健施設、保健所、精神保健福祉センター等、様々な保健医療機関に配置されている(厚生労働省通知「医療ソーシャルワーカー業務指針」)

2)ライフステージに合わせた働き方が叶う職業

急性期の利用者を多く引き受けていた以前の病院では、イレギュラーな業務や臨機応変な対応を求められる場面が日常茶飯事で、残業も多かったそうです。ワークライフバランスを考えるにあたり、職場の異動が好機になったと振り返ります。

整形外科を専門とする今の病院に異動してからは、予定入院の方が多くなりました。そのため、今は自分のペースで業務を進めることができています。ちょうど異動と同時期に結婚したので、ライフスタイル的にもタイミングがよかったんです。

MSWは社会福祉士の職種のなかでも、自分のライフステージに合わせた働き方が選択しやすいので、女性にとって働きやすい仕事だと思います。周りのMSWも、新卒時は急性期などで経験を積み、ライフスタイルの見直しやスキルアップを目指して転職する人が多いです。


近年ソーシャルワーカーを必要としている病院も多く、MSWの需要は年々高まっているよう


3)子育てとの両立を通して仕事の意義を見直せた

出産前は今まで通り働き続けられるか不安だったという天野さんですが、現在はお子さんを育てながら、副主任という責任ある立場で活躍を続けています。育児と仕事の両立において、周りの理解と協力が欠かせないと天野さんは語ります。

育児と仕事の両立は不安だらけでしたが、家族と職場の理解・協力に助けられ、なんとか両立できています。何より出産後は「子どものために仕事をしている」という価値観が生まれ、仕事の意義を見直すことができました


仕事で大変なときは子どもの顔を見ると癒されるし、育児でイライラしたときは通勤などの1人時間でリラックスできるので、両立しているからこそ精神的なバランスが取れているのだと思います。


時短勤務のため、業務では今後必要となる支援をあらかじめ準備しておく等、見通しをもって効率的に仕事を進めているという

どんなお仕事?

1)MSWの役割

現在は私を含めたMSW2名体制で入院・外来患者様に対し相談支援を行っています。入院患者様には退院調整(在宅調整、転院調整)や制度案内等、外来患者様には在宅生活での課題解決などの援助を行います。

医師や看護師からのオーダーで支援が始まることもありますが、患者様の抱える課題をふまえて支援の緊急性を判断し、MSW自ら介入することも多いです。


2)「連携」の重要性

利用者にもそれぞれの課題や特性があるため、支援方法については多職種と協力しながら対応していくといいます。
また、天野さんが担当しているケースでは、介護保険制度の申請支援が多いとのこと。このようにMSWは、利用者の地域資源や制度の活用をフォローする業務が主となるため、外部機関との連携が不可欠です。

患者様のなかには精神疾患があったり、家族からの支援が受けづらい方もいるため、それぞれの患者様に合った丁寧な支援が求められます。

そういうときは、信頼関係が既に築けているスタッフや看護師等にヒアリングし、どのような対応方法が最善かをアセスメントします。こういった多職種間の連携が重要となるため、普段から情報の共有を徹底しています。


3)自己研鑽で専門性を高める

常に最新の制度や地域資源の情報を把握する必要があるMSW。天野さんは大学時代の恩師が定期的に開催するオンライン勉強会に参加し、情報収集やスキルアップを行っているそう。

3~4か月に1回、MSWをしているゼミの卒業生がオンライン上で集まり、先生の講義を受けたり事例検討をしています。それぞれの近況や職場の変化を報告しあうことで、同じ業界の情報を把握できるので、とてもいい機会になっています。

そのとき困っているケースを持ち寄ると、専門性をもつ先生やMSW仲間から意見をもらえたりするので、スキルアップにも繋がります。

keyword
事例検討(RB2026 p.540)
・事例分析を通して得た理解から、方向性や目標などを検討する。
・サービスの質の向上や、ソーシャルワークの専門性の向上につながる。

福祉に関心のあるあなたへ

1)信頼関係を築くには

MSWの仕事をするうえで、天野さんは「聞く力」と「基本的な医療知識」が、利用者や関係者と信頼関係を築くのに重要だといいます。

患者様やご家族の話をよく聞いて必要な支援を検討するので、共感力と話を聞く力はMSWにとって重要なスキルです。なかには話がまとまらない方もいるので、忍耐強く聞くことが信頼に繋がります。

また、多職種との連携において、基本的な医療知識は必須です。学生時代にすべての知識を習得できるわけではないので、わからない用語はその都度調べたり、医師や看護師に質問したりと日々勉強しています。特に新人のときには色々な部署に出向いて、様々な職種の方と直接お話しをすることが大切です。


2)俯瞰して自分の役割を考える

またMSWのみならず、対人援助職で働くにあたって、感情だけで動かず、自分を俯瞰し客観的にみて、利用者を支援していくことが重要だといいます。学生のうちからそのような思考を意識しておくと、現場に出たときに役立つとアドバイスしてくれました。

先輩からはよく「自分のポジショニングを考えよう」と言われました。私に求められていること、ソーシャルワーカーに求められていること、ソーシャルワーカーが病院で求められていることをよく考えていました。

そのおかげで、病院内での自分の役割や、地域での病院の役割を考えて行動することは、今でも自分のなかに根付いています。


3)社会福祉士の魅力とは

ご自身の入院経験をきっかけに、社会福祉士の道を志した天野さん。今では家族との時間も大切にしながら、初心を忘れずに日々やりがいをもって、MSWとして活躍されています。天野さんは社会福祉士の魅力についてこう語ります。

社会福祉士は色々な人の人生に関わりながら、自分の価値観や思考の幅を広げ、深められることが魅力だと感じています。様々な仕事が機械化されていくなか、福祉は人にしかできない仕事なので、今後も求められていく重要な存在だと思います。

学生時代には自分に相談支援なんてできるのだろうかと不安になることもありましたが、そんなときはいつも初心に立ち戻り、自分がなぜ勉強しているのかを思い出していました。迷ったときは、ぜひ初心を思い出してください

 

 

天野さん、貴重なお話をありがとうございました!ライフステージの変化があっても、初心を忘れずに自分のやりたいことを続けている姿がとても輝いて見えました。これからも沢山の患者様の心に寄り添う社会福祉士として活躍を続けてほしいぞう。


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