福ぞうくんがいく!社会福祉士の活躍
#06 医療法人社団ゆみの

こんにちは、福ぞうです。
医療、地域、行政、高齢者、障がい、児童、司法…などなど、様々な分野で活躍する社会福祉士たち。
社会福祉士は、利用者さんそれぞれの背景や課題があるなかで、一人ひとりの「その人らしく生きる(wellbeing)」道を一緒に探していきます。
活躍の場がどんどん広がっている社会福祉士に、福ぞうがお話を聞きました。

  1. 迷いからうまれた「福祉」という新たな道
  2. MSWとの出会いと現場への葛藤
  1. クライエントの「その人らしい人生」を叶える
  2. 多職種連携で叶えた、がん末期患者様の自宅看取り
  3. チームの支援の質を高める工夫
  1. 現場の声を国へ届けるソーシャルアクション
  2. 「資格」は迷ったときに立ち返る専門職の土台
  3. 福祉は人生そのものを強みにできるフィールド

総合内科クリニックグループ「医療法人社団ゆみの」とは

2012年に設立された、東京・大阪・愛媛・福岡に8拠点、ベトナムに2拠点を展開している総合内科クリニックグループです。
多数のMSW(医療ソーシャルワーカー)をはじめ、医師、看護師、管理栄養士、リハビリ職などによる多職種連携を強みとしており、複雑なケースにも対応できます。
「地域に開かれたクリニック」であることを大切にしているので、他機関では対応が難しい患者様も積極的に受け入れています。一つひとつのケースを地域が抱える社会的課題と捉え、最終的にはソーシャルアクションへと繋げられるよう、努めています。

keyword
ソーシャルアクション(RB2027 p.530)
ソーシャルアクションとは、誰もが参加できる社会を実現するために、既存の制度・サービスの改善、廃止や、新たな制度・サービスの創出を社会に働きかけ、その実現を目指す組織的な活動のことである 。

「自分らしい生き方」を在宅医療で支える社会福祉士

医療法人社団ゆみの
齋藤 慶子さん

新卒で銀行に勤めるも、福祉分野への強い思いから退職を決意。30歳で立教大学コミュニティ福祉学部に編入学。卒業後、大学病院での医療ソーシャルワーカー(MSW)を経て、外来診療と在宅医療を包括的に提供する医療法人社団ゆみのに転職。現在はMSW業務のほか、法人全体の在宅療養支援室 室長として管理業務も担う。社会福祉士。精神保健福祉士。

公益社団法人 日本医療ソーシャルワーカー協会 副会長
チーム医療推進協議会 理事
一般社団法人 日本在宅医療連合学会 評議員
循環器病対策推進協議会 委員
一般社団法人 日本循環器協会患者連携委員会 委員


1)迷いからうまれた「福祉」という新たな道

学生時代は明確な目標をもたず、流れに身を委ねて過ごしていたという齋藤さん。短大卒業後は銀行に勤め、9年間働きました。
しかし、20代後半に入り、「これまで敷かれたレールの上を進んできたけれど、このままではいけない」と漠然とした焦りを感じたといいます。現状を変えるべく資格取得を考えていたところ、福祉に関心を抱く出来事があったと振り返ります。

ちょうどその頃、親族が入院したことで医療機関と接する機会が増え、自然と「福祉」を意識する環境にありました。そんななか、昔からお世話になっている手話教室の先生との会話で言語聴覚士という仕事を知り、受験することにしたんです。
残念ながら試験には不合格となってしまいましたが、勉強した知識を何かに活かせないかと調べるなかで、「社会福祉士」に出会いました。
これなら銀行で培った相談業務の経験も活かせるし、より多様な方々の支援に携われると感じたため、思い切って銀行を退職し、大学へ編入学する道を選びました。

2)MSWとの出会いと現場への葛藤

立教大学コミュニティ福祉学部3年に編入した齋藤さんは、同じタイミングで赴任してきた恩師・松山 真先生のゼミに入ったことで、MSWの存在を知ります。

大学では、社会人経験のある同期たちと意欲的に学び合う貴重な時間を過ごしました。松山先生のゼミをきっかけに、その後のキャリアへと繋がるMSWの存在を知れたことも、私の人生における大きな出会いでしたね。

4年生の時に先生からのご紹介で大学病院でのアルバイトを経験し、現場で活躍されるMSWの姿を間近でみたことで、自分自身もMSWを志す契機になりました。
その後、アルバイトでお世話になったMSWの方からお声がけいただいた縁もあり、そのまま同病院へ入職することになったんです。

大学病院に入職した齋藤さんですが、様々な疾患や診療科ごとの特色を学べる反面、退院を希望する患者様と主治医らの考え方の違いに直面し、歯がゆさを感じる場面が多かったと当時を振り返ります。

患者様が退院を望まれても、医療的なリスクから主治医や看護師に「困難だ」と判断されてしまうことがありました。私たちMSWが、患者様ご自身のエンパワメントや社会資源を活用すれば退院は可能だと説明しても、なかなか理解を得られず、もどかしく感じていたんです。

そうしたなかで、病棟のほぼ全員から退院を反対されていた患者様のケースがありました。普段なら諦めざるを得ない状況でしたが、ケアマネジャーや地域の看護師の方々にご協力いただき、無事退院を実現できたんです。
地域の専門職の方々が「退院できる」と声を上げたことで、それまで反対していた主治医たちが納得する様子をみて、病院の中の言葉より外からの言葉の方が響くのかと痛感して。
「それなら私が外に出よう」と思い立ち、地域に出て、在宅医療に携わることを決意しました。

この出来事が地域に興味を持ったきっかけであり、今の齋藤さんの礎になっているという

どんなお仕事?

大学病院を退職後、東京の社会資源を学ぶために別の病院で1年間経験を積みました。
その後、採用面接の際に先輩から言われた「在宅医療や地域の現場では、小さな関わりも社会資源も、すべてがソーシャルワークになる」という言葉に、齋藤さんは深く感銘を受けます。大学病院時代とは異なる新しく柔軟なソーシャルワークに挑戦したいと思い、現在勤務しているクリニックへ入職しました。

keyword
在宅医療(RB2027 p.751)
在宅医療とは、保険医療機関、介護老人保健施設又は介護医療院で療養を行っている患者以外の患者に対するものをいう(厚生労働省通知「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」別添1 )。

1)クライエントの「その人らしい人生」を叶える

齋藤さんが担う業務は多岐にわたります。
その1つとして、在宅医療を望む患者様に対し、訪問診療についての説明や契約の手続きをするなかで、「どのような暮らしをしたいか」や「どんな人生を送りたいか」を聞き取り、それを実現するための制度やサービスを提案する個別支援を行っています。

どれだけ設備が整った病院であっても、家に帰りたいと望む患者様は多いです。自分のタイミングで寝起きして好きなものを食べ、気分でふらっと外出することもできる自宅での生活が幸せだと話す患者様の明るい表情を見ると、必ずしも安全が守られた環境がベストではないのかもしれないと感じます。

患者様のご自宅を訪問すると、家族写真や趣味の道具、洗濯物のたたみ方一つからその人の人生が見えます。病院の白い壁のなかでは聞けなかった物語を想像し、その人らしい生き方を支えるために必要な支援は何かを考えます。私にとってそれが在宅医療ならではのおもしろさであり、やりがいです。

患者様にはパンフレットを見せながら、丁寧にヒアリングを行う

2)多職種連携で叶えた、がん末期患者の自宅看取り

その人らしい生活や価値観をサポートすることにやりがいを感じると話す齋藤さん。クライエントが「家に帰りたい」と強く望むのであれば、どんなに難しい状況であっても実現できると信じて支援を行っているといいます。
そう確信できる背景には、誰もが在宅医療は難しいと諦めかけた状況から、多職種連携によって希望を叶えることができた、印象深いエピソードがあったからだと続けます。

今でも忘れられない患者様がいます。

がんの末期かつ独居の患者様で、酸素吸入を必要としながらも大のタバコ好きという方でした。医療的なリスクが高いにもかかわらず、ご自身の健康や体調以上に、自由な暮らしを大切にされていて…。本人は「絶対に自宅で最期を迎えたい」と希望していましたが、当然ながら周囲の関係者は猛反対でした。
それでも私は絶対に患者様の望む人生を実現させたいという思いがあったので、反対していたケアマネジャー、ヘルパー等のスタッフと話し合いを重ね、一つひとつ課題を解消していきました。
関係者間の調整はとても大変でしたが、周囲も徐々に理解を示してくれるようになりました。当初は強く反対していたスタッフが、患者様と信頼関係を築き、ケーキを一緒に食べに行く約束をするような親密な間柄へと変化した様子をみて、感動したことを覚えています。

最終的には、患者様が望んだ通り、自宅で旅立たれました。地域における多職種連携の強さを実感した、思い出深いケースです。


3)チームの支援の質を高める工夫

「医療法人社団ゆみの」には多くのMSWが所属しており、齋藤さんは在宅療養支援室の室長として組織の管理業務も担っています。同法人では、病院だけではなく地域包括支援センターや老人ホームなど、多様な勤務経歴をもつMSWが集まり、クライエント一人ひとりの複雑な背景に寄り添った支援を展開しています。

支援の質を個人の経験や感覚だけに頼って左右させないため、クリニック全拠点で一貫したクオリティを維持できるよう、様々な工夫を行っているといいます。

在宅医療の現場では、MSWが1人で患者様のご自宅や事業所へ行くことも多く、不安や課題を抱え込みやすい傾向にあります。だからこそ、拠点の違いや経験年数に関係なく質の高い支援を提供できるよう、組織的な仕組みづくりを進めています。日頃から個人面談などを設け、対話を通してMSWとしての支援の軸や価値観を共有することを大切にしています。

また、MSWの仕事は相談援助業務だけでなく、多岐にわたる事務作業が大きな負担となっているのが実情です。そこで、マニュアルの基礎作成や情報収集をはじめとする一部の業務にAIを活用し、業務効率化と負担軽減を図っています。

個人やチームでの対話を重ねることで、解決の糸口が見つかることがあるという


福祉に関心のあるあなたへ

1)現場の声を国へ届けるソーシャルアクション

齋藤さんの活躍はクリニック内にとどまりません。日本医療ソーシャルワーカー協会の副会長も務めており、現場のニーズや時代の変化に合わせて約20年ぶりに実施された「医療ソーシャルワーカー業務指針」の改定にも貢献しました。

今回の改定では、入院や外来のみならず、在宅医療におけるMSWの役割や多職種連携の重要性などが明確化されたんです。
さらに、MSWの役割を担う専門職として「社会福祉士」という国家資格が具体的に明記されたことも、MSWの歴史における大きな一歩だと感じます。

齋藤さんの歩みそのものが、次世代の光になっていると感じた


2)「資格」は迷ったときに立ち返る専門職の土台

MSWとして経験を重ね、多様な年代のスタッフがやりがいをもって働ける職場環境づくりに向け、多角的な取り組みを推進する齋藤さん。
ソーシャルワークを実践する過程では、ときに土台に立ち返ることが重要だと語ります。

ソーシャルワークは正解がない仕事です。だからこそ「自分はこう支援したい」という軸をもちつつ、仲間と意見を共有しながらクライエントにとっての最善を模索し、社会福祉士としての精神や価値観をブラッシュアップしていく必要があります。

そのためには、技術や知識といったしっかりとした土台が不可欠です。資格そのもの以上に、資格取得のために積み重ねた基礎やスキルに助けられることがあります。人の人生に寄り添う責任の重さを考えると、自分の感覚だけに頼らずに、迷ったときこそ土台に立ち返ることがとても重要だと思います。


3)福祉は人生そのものを強みにできるフィールド

他業種から福祉の世界へと飛び込んだ齋藤さん。今では現場での支援にとどまらず、社会への働きかけにおいても大切な役割を担っています。
最後に、「一人でも多くの方に社会福祉士を目指してほしい」と願う齋藤さんの思いをお聞きしました。

福祉領域に足を踏み入れる前に勤めていた銀行では、やりがいを感じつつも、大きなシステムのなかで一つの駒として日々淡々と働いている感覚があり、もっと変化のある仕事がしたいと考え、転職を決意しました。
現在は毎日めまぐるしく支援に向き合っています。どんなときもチームで頭を悩ませながら支援するプロセスに、難しいながら楽しさも感じています。クライエントそれぞれの背景に異なる物語があり、一つとして同じ暮らしや人生はありません。だからこそ、様々な価値観をもった社会福祉士がいるべきだと思いますし、どんな人にも活躍してほしいです。
福祉は、あなたの今までの人生そのものを強みにすることができるフィールドです。是非前向きな気持ちで、福祉の世界に一歩踏み出してみてください。

齋藤さん、貴重なお話をありがとうございました!クライエント一人ひとりの人生に向き合い、ソーシャルアクションへと還元していく姿勢から、恩師である松山先生からの教えがしっかりと受け継がれていることがわかり、感動したぞう。これを読んだあなたも、自分の経験や想いを強みにして、社会福祉士としての新たな一歩を踏み出してみてほしいぞう!

▶福ぞうがいく!社会福祉士の活躍シリーズ


\社会福祉士国試の決定版!『レビューブック』『クエスチョン・バンク』の紹介はコチラ/