第30回国家試験へ向けて
本学(新潟医療福祉大学)の社会福祉学科では、原則として全員が社会福祉士国家試験を受験します。第29回国試において本学のような福祉系大学等で「新卒」が受験した大学は210校に及びますが、「新卒」が100人以上受験する大学は本学を含め16校に過ぎません。本学の第29回国試合格率は、58.1%とその中でも上位でした。今回は、このような実績をもつ本学の国試対策のポイントを紹介します。
法制度等をマスターすることが合格への近道
これまでも『INFORMA』 を通じて、法制度の動向、白書等の政府刊行物、各種調査統計、報告書等(以下「法制度等」)の重要性を繰り返し指摘してきました。例えば、第29回国試における法制度等(諸外国の社会保障制度等を含む)に関する出題は、共通科目は68.7%、専門科目は41.8%、全体では56.7%でした。法制度等に関する問題をマスターすることが合格の近道であることを再認識してほしいと思います。
国試という「高い山」の登り方
本学では、「国試」を山に例えて、登り方を工夫しています。急に登り始めると体力を消耗してしまいます。順調に登ってきても、なかなか頂上が見えてこないと疲れを感じます。こんなとき、今、登っている所が何合目か、次の目標は何合目か、休憩をとる地点はどこか、急な坂や険しい所はどう登るか、頂上近くの9合目までどれくらいか、などを具体的に知ることが大切です。山登りに例えながら、幾つかのポイントを述べていきます。
山の高さを知る
社会福祉振興・試験センター(http://www.sssc.or.jp/shakai/past_exam/index.html)にアクセスして、過去3回の試験問題から、解答できる力あるいは難易度を点検します。このとき、わからない事柄(系統的脱感作、幸福度指標など)や研究者等(セン、ラウントリーなど)を科目別に書き出し、出題実績を把握するようにすると効果的です。
登山に必要なものを準備する
『QB』と『RB』を用意します。『QB』は過去問題を解き、重要語句や関連知識等を学習することに用います。また、『RB』は出題基準に沿って過去10年分の出題内容と最新の法改正等が体系的に整理されているので、学習プロセスに応じて知識を確認し蓄積していくことに役立てます。国試対策のテキスト等を数多くそろえるより、『QB』と『RB』にしぼり、焦点化した学習を進めることを勧めます。
スマートフォンは必須アイテム
スマートフォンは有効です。試験問題全体の約6割を占める法制度等だけでなく、理論や技術に関する必要な知識を調べることができます。例えば、第29回問題42の共同募金や、問題118の相談援助の記録方法に関してスマートフォンで検索してみてください。必要な知識が確実に得られることを実感できます。また、メディックメディアのWebサイトの【法律・統計Topics】も法改正等に関して有効なツールですので、積極的に活用しましょう。
3合目への道標
国試対策の最初の目標は、過去問を丁寧に解くことです。『QB』を用いて理解できることと理解できないことを一問一問識別してください。ここまでが、登山でいう少し見晴らしが開けてくる3合目に当たります。
5合目への道標
8~9月の暑い時期に5合目に差し掛かります。ここからは、『RB』を用いて重要語句や関連知識等の必要な知識を確認することです。2~3ヵ月間をかけて出題傾向や頻出問題の内容を把握し、学習内容を重点化あるいは焦点化しながら国試に求められる知識を蓄積しましょう。周囲の学習速度に惑わされず、自分のペースで一歩一歩確実に進んでください。
7合目への道標
国試まで残り3ヵ月を切る頃です。疲れも感じモチベーションを維持することに苦労すると思います。ここからが正念場です。『RB』への書き込みや,貼り付ける付箋が増えてきました。試験全体の6割を占める法制度等に関する知識を確実に覚えてください。頂上まであと一息の9合目に向かう正しい道標です。
頂上への道標
過去問等(3合目)→頻出問題等(5合目)→法制度等(7合目)を越えてやっと頂上が見えてきました。あとは、書き込んで太った『My RB』を反復学習するとともに、政府統計等のデータ(地方財政、社会保障費用、国民医療費、生活保護の動向等)や研究者の人名とその業績等を覚え、試験問題の各選択肢の正誤を判断できる力を高めるだけです。
社会福祉士を目指す皆さんへ
社会福祉士国家試験は、依然として問題の良否はありますが、合格に必要な問題は平準化されてきました。つまり、合格のための最低基準は、過去問学習と法制度等に関する正確な理解です。皆さんが、この記事を道標にして「国試」という高い山を登りきることを心から願っています。
執筆者PROFILE
丸田秋男 Maruta Akio
現職 | 新潟医療福祉大学副学長(社会福祉学部長) |
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最終学歴 | 新潟大学大学院現代社会文化研究科博士課程修了 |
職歴 | 新潟県福祉保健部障害福祉課参事 |
学会 | 日本地域政策学会副会長 |
資格 | 社会福祉士 |
委員 | 新潟県生涯学習審議会会長,新潟市社会福祉審議会委員長など |
業績 | 社会福祉士受験資格取得を卒業要件とする社会福祉学部(入学定員120人)を,国家試験合格率等で全国トップクラスに導いたプロフェッション教育の第一人者 |
その他 | 『クエスチョン・バンク社会福祉士国家試験問題解説』 『社会福祉士国家試験のためのレビューブック』の執筆・監修者 |