福ぞうくんがいく!社会福祉士の活躍
#02 児童養護施設 東京育成園
こんにちは、福ぞうです。
医療、地域、行政、高齢者、障がい、児童、司法…などなど、様々な分野で活躍する社会福祉士たち。
社会福祉士は、利用者さんそれぞれの背景や課題があるなかで、一人ひとりの「その人らしく生きる(wellbeing)」道を一緒に探していきます。
活躍の場がどんどん広がっている社会福祉士に、福ぞうがお話を聞きました。
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児童養護施設「社会福祉法人 東京育成園」とは
1896年の東北三陸地方大津波による災害孤児の救済からはじまり、長い歴史をもつ児童養護施設「社会福祉法人 東京育成園」。基本理念に子ども中心主義を掲げており、事業が子どもの最善の利益であることに努め、子どもとその養育者を含めた幸せが実現できるよう、職員一人ひとりが高い専門性をもつことを大切にしています。
児童養護施設(RB2026 p.617)
保護者のない児童(乳児を除く。ただし、特に必要のある場合には乳児を含む。)、虐待されている児童、その他環境上養護を要する児童を入所させて養護し、退所した者に対する相談その他の自立のための援助を行う施設(『児童福祉法 第41条』)。
笑顔で迎えてくれた三村さん(左)と岩田さん(右)
若手の育成に努める社会福祉士
社会福祉法人 東京育成園
三村 貴紀さん
東京育成園 統括主任。社会福祉士、第二種衛生管理者。児童養護施設東京育成園にて居室担当ケアワーカーに従事したのち、現職。
1)直感や偶然が今に繋がっている
三村さんは東京育成園に入職して現在25年目(2025年4月時点)。何人もの子ども達を支援し、社会へ送り出し、またそんな子ども達を支える職員を育ててきました。
里親支援の取組や、新たなグループホームの開設等どんどん発展していく東京育成園の変化を見守る三村さんだが、「福祉」の世界に入ったきっかけは思いがけないことだったといいます。
大学受験を検討するにあたって受けた適性検査で社会福祉と診断が出たんです。
それが印象的だったのと、一時期学校の先生に憧れていたこともあり、なんとなく子どもと関わる仕事にも興味があって。そういった理由で、なんとなく福祉系の大学に進学しました。 |
その後の就職活動では、具体的な進路希望がなくて、なかなか行動に移せませんでした。4年生の3月に差し掛かった頃、大学から東京育成園を紹介されたそうです。児童養護施設がどんな場所かもよくわからないまま、就職試験(宿直業務)当日を迎えました。
正直最初は自分がここで働けるイメージができませんでした。そんな気持ちのまま初日が終わろうとしていたのですが、夜に小学1年生の寝かしつけを頼まれたんです。
僕に気を遣ったのか、その子は「ひとりで寝れるからいいよ」と言ってきて。衝撃が走りました。こんな小さな子に気を遣わせてしまっている、自分に何かできることはないかと反省しました。気持ちを新たにして迎えた翌日、景色が違って見えて、働くことに前向きになれたんです。 |
2)児童養護施設の役割とは
少子化が問題として掲げられる一方で、虐待相談対応件数は増加傾向にあり、今後も児童養護施設をはじめ、要保護児童に対応できる機関の需要は高まることが予想されます。
複雑な背景や、心に傷を抱えた子どもが集まる児童養護施設の役割を、三村さんは「種を蒔く」と表現します。
施設に来たくて来ている子どもはいません。親と暮らせない状況は決していいものではないだろうし、施設にいたこと自体を思い出として消し去りたい人もいると思うから、そこに対しては深追いしません。
ただ、施設にいる間だけは最低限の常識や進路についての厳しい話をします。もちろん受け入れられず反抗する子どももいますが、一度関係性が悪くなったとしても必ず戻ってくる。そうして皆「あの時言われたことが今ならわかる」と、伝えたメッセージが活きていることを話してくれるんです。 |
児童虐待(RB2026 p.644)
保護者が児童に対し、①身体的虐待②性的虐待③ネグレクト④心理的虐待を行うこと(『児童福祉法 第2条』)。
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若手を育てることへのやりがい
1)学生の「内面」をみることが重要
東京育成園では年に約30人もの実習生を受け入れており、三村さんは実習担当責任者として大学との調整や、中間スーパービジョンや最終スーパービジョン、巡回指導を担当しています。
近年では新卒採用において、実習からアルバイトへ、その後採用に繋げる形式を主としているため、学生のアセスメントに重点を置いているようです。
どんなに忙しくても、実習生全員と会うようにしています。実習時に提出された書類から得られる情報だけでなく、内面を見たいので。
実習生の受け入れをただの業務と捉えずに、未来の人材確保や福祉で活躍する担い手に繋げる場だと思っているので、アセスメントには力を入れています。 |
2)実習生に求めるものは「社会性」
実習生を評価するにあたって、社会性を特に重視しているといいます。実習先は利用者の生活の場なので、実習生の一つひとつの言動が利用者に影響を及ぼすこともあるからです。
例えば休むときに事前に連絡するとか、挨拶ができるとか、わからないときは「次は何をすればいいですか?」と聞けるとか。そういう基本的なコミュニケーションや常識があれば十分です。
特別な才能があるかどうかや、子どもとの関わりのうまさを気にしてしまうかもしれないけど、大事なのはそこではないんです。 |
職員だけでなく、利用者も実習生のことをよく観察し、どんな人か判断しているよう。実習中の言動には細心の注意を払う必要があります。身だしなみ等についても、実習先が規定した内容を必ず守るようにしましょう。
僕が一番大事にしてるのは、子どもに好かれるかどうか。特に幼児さん。
幼児さんが遊びたくなるような実習生は好印象です。例えば「このおねえさん(おにいさん)と遊んできて」と声をかけたときに、真顔で「行きたくない」と抵抗したら何かあるのかなと勘繰ってしまう。中高生から大人への評価はその瞬間の判断が多いですが、幼児は特に本能的に大人を観察しているので、職員からは見えていない普段の言動も注意したほうがいいと思います。 |
3)ここでの学びを様々な場所で活かしてほしい
実習からアルバイトを経て、最終的に東京育成園に就職しないことを選択する学生もいます。それでも「就職先に育成園を選ぶかどうかではなく、ここで学んだことをどう活かしてくれるかが大事」と三村さんはやりがいについて語ります。
ここでの学びをきっかけに同じ児童福祉という分野を選んでくれたり、また別の分野で活躍していたりと、アルバイトの進路は様々です。
数年経って、研修やケース連携等で再会することもあるんです。活躍する場所はそれぞれ違っても、あの時の経験を活かしてくれていることがわかります。そういうときに、長年人材育成に携わってきた意義を感じますね。 |
育ててきた後輩がホーム長(リーダー職)に就いて頑張っている姿を見ることに、大きな喜びを感じるそう
福祉に関心のあるあなたへ
自分がここまで長く働けているのは大学4年間がとても楽しいものだったから、と三村さんは振り返ります。知識を身につけるのも大事だけれど、学校生活を充実させ、色々な経験をすることが、社会人へのスイッチを切り替えるために必要だと話します。
社会福祉士という仕事は、対人援助における専門性の高い職種だと思います。誰もができるわけではないので、学校でしっかりと基礎を学び、現場で実践力を身につけてほしいと思います。
皆さんも今この瞬間の自分の生活に対して一生懸命にやり切って、それぞれのステージで活躍する社会福祉士になってください! |
三村さん、貴重なお話をありがとうございました!すべての子どもたちが健やかに成長できる環境があり続けるためには、今後の児童福祉の発展が重要となります。そんなフィールドで活躍する社会福祉士を、どんどん育ててほしいぞう。