自治体勤務の社会福祉士3年目
児童相談所のケースワーカー
Yさん


社会福祉士の資格を取得し、公務員試験に合格して希望していた児童相談所に入職。虐待を受けたお子さんやご家族を支援するケースワーカーとして勤務し、現在3年目

■児童相談所の業務

児童相談所は、18歳未満の児童について相談を受け付ける行政機関です。子育ての相談から、不登校や非行、虐待、保護者の病気や離婚による養育など、さまざまな問題に助言や支援をします。

児童相談所では、児童福祉司、児童心理司などの専門スタッフが相談にあたります。

■里親支援をしている知人のお子さんとの触れ合いがきっかけに

高校生の頃に、里親支援をしている知人がいて、そのお子さんと触れ合うことがあり、福祉に関心を持ち ました。

里親制度とは、さまざまな理由で実家庭で生活ができない子どもを家庭内で預かり養育する制度です。温かい愛情と正しい理解をもった家庭で育てることで、子どもの健全な育成を図ります。里親になるには、地域の児童相談所で研修や家庭訪問などを受け、児童福祉審議会で審議ののち、認定を受けられます。

里親は、小さい子どもが大きくなるまで育てることが一般的なイメージだと思うのですが、2~3週間から3か月くらいの間、一時的に預かったり、親御さんが亡くなった中学生のお子さんで、学校の関係で施設から通えない場合に卒業までの期間に限定して預かったりというケースもあります。
このように、要保護児童の養育を里親に委託するのも児童相談所の業務のひとつ です。

■1人で約30件のケースを担当

現在、私は児童相談所で虐待対応や子育てに関する相談支援 をしています。虐待の通報は毎年増えていて、私が所属する自治体では、昨年は年間2,600件ほどありました。ケースワーカー1人が約30件のケースを担当 しています。

児童相談所は、警察などから虐待の通告を受けると、保護者や子ども本人と話をし、状況を調査します。法律で子どもを一時保護する期間は原則2か月を超えてはいけないと決まっていますが、必要な手続きをすれば延長 できます。保護期間に虐待の再発防止について保護者と話し合い、親子関係の調整を図って帰宅となります。

一方で、虐待の程度が重かったり、子どもが帰宅を恐れていたりと、児童相談所が帰宅させるとリスクが高いと判断した場合には、家には返さず、施設を探します。

■子どもや親との接し方にも工夫が必要

それぞれのケースに異なる背景があるので、その都度、どのように対応するか頭を悩ませます。対応に困ったときには、同じようなケースを担当された先輩職員に相談 するようにしています。

子どもとの面接では、子どもがなかなか心を開いてくれず、話しをしてくれないこともあります。そういうケースでは、頻繁に会いに行って安心してもらえるようにすることを心がけ ています。

話し方も、その子の喋り方や語彙に合わせるようにしたり、質問の仕方を変えたり、話していることを否定せず聞いたりと工夫します。
そうするうちに、いままで話してくれなかったことや、家での体験などを話してくれるようになります。

子どもによっては、自分が悪いから暴力を受けてしまったのだと思っている子もいるので、そういうときは、「悪くない」とはっきり言ってあげる ことが大切です。

一般的に、虐待というと親側に要因があると思われがちですが、子どもが育てづらい性格であったり、発達特性をもっていて、それが要因となることもあります。そういう場合には、子どもの心理判定をしてその特性を伝え たり、子どもをよく観察して親に対して子どもの性格に合った接し方をお伝え したりするなど、親へのサポートも重要になります。

■一時保護の子どもの通院付き添いも業務のひとつ

一時保護している子どもの通院は、ケースワーカーが付き添う ことになっています。
複数人の子どもを保護していると、多いときは週に1~2回通います。診察に2時間くらい待つことも少なくなく、時間がかかります。

待っているときも子どもの面倒をみているので、当然ですが、ほかの仕事はできません。職員は、いまどきの親御さんのようにスマホやゲームを持ち歩くことはできないので、塗り絵やあやとり、折り紙など をしています。周りの方から見ると珍しく思えるかもしれませんね。(笑)

■子どもだけではなく 親子関係を支援

現在では虐待が問題視されているため、教育方針で子どもに手をあげるという親御さんは多くはありません。
子どもが何回言っても言うことを聞かず、対応に苦慮した結果手をあげてしまったというケースが意外と多く、大半の親御さんは一度子どもが保護されると反省して気をつける ようになります。
一時保護になっても、保護者も子どもも帰宅を希望することが多いです。そういったケースでは、虐待の再発防止を図ったうえで帰宅しています。

印象に残っているケースとして、20歳代の若い母親で、5人のお子さんがいて、6人目を妊娠中という方がいました。
生活に困窮している家庭で、虐待ではなく、親御さんから子どもを施設に入所させたいと希望され、児童相談所へいらっしゃいました。
お話を伺うと、母親のパートナーが何回も変わって、そのたびに子どもが生まれ、異父兄弟を抱えるようになったとのこと。新しい父親と前の父親の子どもの関係がうまくいかず、そのうちに父親が手をあげてしまうのではないかという心配もあるということでした。
加えて、母親自身も子どものとき施設にいた経験がありました。幼少期に親から十分な愛情を受けていなかったために、自分の子どもに対しても、しつけや愛情のかけ方がわからない とお話しされていました。

施設に入って良い方向に育つお子さんも多くいますが、長い目でみていく必要があります。
お預かりして家に返して終わりにするのではなく、しばらくは家庭訪問などを継続 して様子をみます。

支援をしている間に親子関係がうまくいくご家庭もあります。そういうケースが多くなるよう願って、日々、子どもや親御さんを支援しています。

■辛いときは助け合って モチベーションアップ

親から子どもを離すという、どちらかというと嫌われ役の仕事なので、怒鳴られたり、理不尽なことを言われたりして気持ちが落ち込む こともあります。
また、あらかじめ日時を決めて家庭訪問しても、親御さんにすっぽかされることもあります。

辛いことや大変なことも多い仕事ですが、職場内では助け合う雰囲気があり救われています。職員同士で声をかけ合ったり、情報を共有したりして、みんなでモチベーションを高め ています。

■ベテランの先輩の ケースワークに憧れる

私の職場には、20年以上児童相談所で勤務されている先輩がいて、その方の対応がとても勉強になります。

たとえば、子どもが言うことを聞かないと相談してきた親御さんに対する子育てのアドバイスやほかの機関につなげる方法の提案などが見事で。
対応の仕方に引き出しがたくさんあると、ケースワークの幅が広がっていいなと憧れ ます。
大学の講義では学べないケースワークを間近でみることができると、仕事の奥深さと面白さを感じ、やる気につながり ます。

■経験を積んで引き出しの多いケースワーカーを目指す

公務員なので、3~4年で異動があります。私は福祉職での採用で、児童相談所だけでなく、福祉事務所やリハビリテーションセンターなどいろいろなところへの異動を希望することができますが、私は次も児童相談所を希望しようと考えています。

児童相談所も事務所によってやり方が違うので、いろいろな事務所で経験を積み、多くの引き出しをもち、柔軟にケースワークができるワーカーに成長していきたい と思っています。


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